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「萎縮診療」という言葉をご存知でしょうか?
これは歯科関係者以外だとあまりご存じない言葉かと思います
SNSを見ていて全然知らない方の投稿ですが、写真のような投稿があったので今回はこれについて書いてみようと思います
以前にも書きましたが、保険診療には保険診療のルールがあります
歯科医師が保険診療をやるためにはこの国が決めたルールに従って診療をしなくてはいけません
現在国の医療費は底をついています
ですので医療費を下げるためのルールはどんどん増えてきており、また非常に厳しくなってきています
その一つに「高平均点」というルールがあります
これは極端な話昨今の歯科医療において治療内容より厳しいルールです
さてこの高平均点というルールですが、保険診療において歯科医院は国が決めた治療内容を行うと国が決めた料金を患者さんに請求させていただけます
そしてそれらを僕たち歯科医師は「点数」と呼んでいます
例えばある虫歯治療は100点とかそういうふうに決められているわけです
そして保険診療は日本全国どこの歯科医院でやっても同じ料金です
なので日本全国どこでやっても、上手い先生がやっても下手な先生がやっても、最新の機材がある歯医者でも昭和の時代のような機材しかない歯科医院でも同じ料金。
そして結果に問わずやったことによって、保険診療は国が定めた同じ料金です
つまりその治療に対していくらお金をいただくかということが点数です。
そして「平均点」という言葉は、その医療機関が1ヵ月にもらった点数をその月に来た患者さんの人数で割ったものです
なんだか数学の授業みたくなってきましたが笑
平均点とはその歯科医院が1ヶ月で一人当たりの患者さんに請求させていただく医療費です。
前述のように国の医療費はそこをついています
そのため国は現在高くなる医療費を削減するために、保険医療に制限をつけています
平均点がある基準値を超えてしまうと「高平均点指導」といって、厚労省から厳重注意並びに言うことを聞かなかった(平均点を下げなかった)場合は閉院にまでなることもあるという厳しい処置が行われます
この基準値は上位5%(だったかな?)の歯科医院。
つまりその地方の全歯科医院の平均点の1.5倍(だったかな?)を超えた歯科医院が対象になります
ですので、歯科医師は常にその指導対象にならないかどうかを考えながら保険診療をやるわけです。
ここでポイントになるのは「平均値」である(総点数ではない)ということです
勘の言い方はこの仕組みに気づかれると思いますが、ポイントになっているのは総収入ではなく平均です。
つまり平均という事は母数(患者さんの数)が多いほど平均点は下がります
ある数を大きい数で割った方が平均値は小さくなるからです
1➗10と1➗100では100で割った方が小さくなることは周知の事実だと思います
(と、どんどん数学の授業みたくなっていますが汗)
それに加え歯医者でいえば、母数が大きいということは患者さんが多いということ
患者さんが多ければ、例えば入れ歯の高齢者の方のように、点数の低い方も増え、自ずと平均値は下がります
またこれはその地方ごとの平均点で評価されます
なので基準値は都道府県ごとに異なります
東京などは保険診療でやられるケースが少なくなってきています
そのため少し保険診療をやったらすぐ基準値を超えてしまいます
そしてそうなってくるとみんなで平均点を気にするのでどんどん平均点が下がります
こうなると完全に悪循環です
歯医者は保険診療をやらない→平均点は下がっていく→患者さんは保険でちちゃんとした治療を受けられなくなる→もっと平均点が下がる
北海道は全国的にみてまだ平均点の高い都道府県です
なのでまだ保険診療が生き残っています
ですが都会では一部の歯科医院を除き歯医者の保険診療ではまともなことができない(まともなことをやると指導が入る)時代になってきています
そして、北海道も段々とその傾向が出てきています
さてこの平均点についてもう少し解説します
例えば月に2人しか来ていない歯医者さんがあるとしましょう
そこで30,000円分の治療をしたとしたら、30000 ÷ 2でもう他の方は来れないわけです。
またこの医院ではもうこの月は保険治療ができないわけです
さらに勘の良い方はもうお分かりだと思いますが、大きい規模の歯医者さんの方が患者さんが多い傾向にあります
そうするとその分平均点が下がり1ヶ月にいっぱい通うことができ、治療が進むわけです
結果、小さい歯科医院は淘汰され、医療機関は減り、医療費は削減できるという国のやり方です
(ちなみにスタッフさんが5名以下で診療台が2、3台の歯医者の多くはここ5年程度で淘汰されると言われています)
これがもし総収入で評価されると高い(大きな)歯科医院が収入を下げざるをえなくなり、小さい歯科医院に患者さんが分配されます
結果、医療機関や国の負担する医療費は減らないわけですが、平均点で評価すると小さい歯科医院はやっていけなくなり、結果歯医者の数は減っていく
医療費などが減っていきます
つまり国の思惑通りなわけです
本当に役人の方々って頭がいいなあって思います
自分なら医療費減らそうと思うと高収入(大きな)歯科医院に規制をかけてしまいます汗
そして、この方がSNSで書かれていたことがまさにそうで、月2回(小規模の歯科医院でちゃんとやっていたら2回以上患者さんがきたら大体超えます)とかいわれた、保険外ならできる。
これはこの先生が悪いのではなくこの国の決まりだからです
では小さい歯科医院はこれに対しどのような対策をするのか?
それは
目次
⚫️小さい歯医者の治療⚫️
(A)保険外診療を強く薦める
一番多いのがこれです
とりわけ昨今の物価高、人件費高においてかなりの歯科医院がそうなってきています
でも僕もそうですがそれではなかなか歯を治しにいけなくなりますよね・・・・
そして本来歯にとっていいことで自由診療を勧められるならいいですが、医院事情で自由診療を勧められるのは嫌ですよね
(B)安価で劣悪な材料を使って安く終わらせる(当然後でその歯は色々な問題が出てくる)
この方法もあります
例えば型取りをしないといけないところをてきとうな安価で劣悪な材料を使って詰めておくというやり方です
このやり方でやられた歯はその時は分からなくても数年後必ず大変なこと(抜歯など)になります
それも嫌ですよね
(C)本来治さなくてはいけない虫歯も見てみぬふりする
これも多いです
平均点を考えると治療をすると超えてしまうので患者さんには虫歯などそこに問題があることは告げず、ただ数ヶ月に一度クリーニングだけしておくというやり方です
もちろんは悪い歯が自然に治るということはないので、やがて大変なことになります
(C)1回に少しだけしか歯科治療を進めず回数増やす
これもありますね
まとめて治さず1回の単価を下げて平均点を下げる
よく歯医者は時間(通院回数)がかかるとか言われるのは実はこの兼ね合いがあります
といった対応になってくるわけです
これがいわゆる「萎縮診療」です。
歯科医師が平均点が超えるのを恐れ萎縮した治療になるということです
話は少し変わりますが開業したての全歯科医師は国が開催する講習会を受講しなくてはいけません
僕が受けた時その講習会で役人の人から
「保険診療は誰のお金でやっていると思っていますか?税金でやってるんです。国のお金なんです。だから積極的な治療はしないでください」と言われました。
これにはちょっとびっくりでした。
国のお金?その財源は皆さんが払ってるお金では??と思いました
度々話していますが、僕はこの国の保険制度は素晴らしいと思います
海外では虫歯で痛くても保険外で高いので治療ができないという方が大勢います
若い頃ベトナムボランティアに参加させていただきそのことを痛烈に感じました
日本は何て恵まれているんだろう・・・と
それが20年以上経って日本の歯科医保険制度が崩壊しかけている
とても悲しい現状ですし、自分はいち歯科医師として少なくとも僕のところに頼ってきていただける方には最良の歯科保険診療を提供したい(もちろん保険外診療が悪いわけではなく、それらを希望する方にも最良の医療を提供したい)と思っています
そのために当院では多くのスタッフさんにご勤務いただき医院規模を拡大し、患者さんが利用しやすい歯科医院となっているということです
こういう流れをいち早く察知し、働き方改革を行い、スタッフさんの環境づくりなどを行なった結果が今の状況です
なので「多くの患者さんにきていただく」は実はお金のためではなく、患者さんのお口の中をより良くしたいという想いと、加えてスタッフさんに働きやすい環境をという想いです
実際お金ならこれだけスタッフさんを増やすと色々大変なことも増えます💦
小規模で保険外診療のみをやるが一番効率的で楽です
ですが医療ってお金だけではない部分がある(あってほしい)と思います
実は当院のような歯科医院にかかるということは他の歯科医院にはないこういうメリットがあります
患者さんが多い歯医者で治すメリット・・・「治療がより早く進む、」「しっかりとした治療が保険治療で受けられる」
これって結構大きなメリットですよね
そして実際すでにもう淘汰は始まっています
今からそういうことに舵をとってもう間に合わない状況です
働く人たちは減っていて、そこにきて大きい歯科医院と小さい歯科医院では給与や待遇面で大きな格差が生じています
小さい歯科医院は今から自分達と同じ給与水準にしようとすると潰れてしまいます
僕自身はあの時期に色々と医院改革をしておいて本当に良かったと思います
さて、今日は「萎縮診療」、「平均点」ということについて考えてみました
書いたきっかけは最初に書いたこのSNSです
想いとしてはきっとこうやって言われてるこの先生は真面目な先生で、ちゃんと保険診療でしっかりしたことをやってる先生なんでしょう
そういう先生がこうやって言われたらかわいそうという想いと、自分達(歯科医師)ではどうにもできないルールがあり、それは患者さんにあまり知られてない部分であり、国はそういうところを現場任せにしてしまっている(僕たちではどうにもできないことがある)のでそういうことも一般の方にわかってほしいなあという想いで書いてみました
当院はこれからも十勝の方々のお口の中をお守りできる数少ない歯科医院として努力していきたいと思っています
お口の中のことはどのような些細なことでも構いません
お気軽にご相談ください






