歯医者の世界とりわけ小児歯科では「母子分離」という考え方があります
①「母子分離」とは?
この母子分離は治療をする際にお子さんとご両親を分けて(待合室などで待っていただき)お子様1人で診療台に座っていただいた状態で治療などをするというやり方です
ちなみに後で記述しますが当院では例外的な場合を除きこの「母子分離」はやっていません
先日町の検診をした際にふと思ったことがあるので今回はこの「母子分離」について書いてみます
僕が歯医者になった20年近く前は必ず「母子分離」をして治療を行うことが常識でした。
教科書にもそのようなことが書かれています
母子分離が必要である理由として教科書に書いてるのは「ご両親がいると甘えてやれない」というのが理由です
確かにその通りで一部そのようなお子さんもいらっしゃいます
実際に僕が最初に勤務した歯科医院でも両親を診療室に入れていたら院長に激怒されました
「それでは治療ができないのでお子さんの虫歯が治らない。結果お子さんがかわいそうな想いをする」とのことでした
誰にとっても、もちろん僕にとっても歯医者の治療は嫌なものです
ですがやらなければその結果は大変なことになるのでやむを得なくやるわけです、大人は。
(僕はいまだに歯医者嫌いですが笑)
ですが僕も昔そうでしたが子供の頃はやらなくては大変なことになるなんてわかりません
実際僕自身も子供の頃歯医者からは逃げまくっていました
だから今になって自分自身の口の中でとっても困っています汗
神経をとった歯も多く疲れがたまると浮いた状態になったりもします
話は「母子分離」に戻しますが、ですのでお子さんは色んな手を使いなんとか治療をせず終わらせるようにします
それが「泣く」だったり少し知的なやり方だと(僕がやっていた方法は)両親に助けを求め両親に助けて?もらう。
つまりやらないで済む状況を作るということです。
そこで母子分離をすることによってやらなければいけないという環境を作り、覚悟を固めやっていくことになるわけです。
基本的に小児歯科の世界では、母子分離をしないとしっかりとした治療はできないということがいわれています。
②現在の小児歯科の考え方は?
しかし今は少し変わってきています。
時代は変わってきており、治療においては母子分離が絶対的に必要である。
それをやらないとできないお子さんがいるということに変わりは無いのですが、ただ密室(両親がいないところ)でやった際に両親の方から言われのないクレームが来てしまうことがある。
なので今の考え方としては、
「お子さんができないのはその両親やお子さんの自己責任である。なのでできるお子さんにはしっかりやり、できないお子さんに関してはどうなってもしょうがないという考えのもと歯科医師はそこまで介入しないで放置すること。あくまで訴訟などのリスクを回避することを優先とすること。できるようにするのはご家庭の教育に任せる」という考えです。
昔は治療をできるようにさせるようにするのは歯科医師の仕事でした
ですが今はご家庭の仕事で歯科医師はそこまで首を突っ込むべきではなくトラブルにならないようにすることと言われています。
少し悲しい気もしますが時代的にやむを得ない部分でもあるのかと思います
ちなみに当院では小さい頃からフッ素塗布など予防できていただいているので、そこで歯医者や僕達に慣れながら大人になっていくので、母子分離をせずともやれることがほとんどです。
ただ最近多いのですが、他院でそのようなトレーニングをせず放置しており、6歳になって今まで放置していた虫歯が激しい痛みを出し始め何とかしてほしいというケースです
それだけ当院の小児治療が評判になってきてるのは嬉しいことです
そしてその場合、まずはトレーニングから始め成果が出ればそれでいいのですが出ない場合放置したり全身麻酔での治療という訳にもいかないので、ご説明・同意を得られた場合「母子分離」を行いトレーニングをします
大体1、2回の母子分離下でのトレーニングえできるようになるお子さんがほとんどです
通常のやり方でできるようになるケースも多いのですが、一般的に年齢を増すごとに恐怖心が高まるので大きくなればなるほど母子分離が必要なケースも増えます。
③こんなお子さんが・・・
先日町の小児検診でをしてこんなことがありました。
2、3年前当院に来院したお子さんです
歯医者への恐怖心が強くまた虫歯がいっぱいでとんでもない状態の方でした
母子分離をせず練習をしたものの結果が出ず最終手段としてご両親に母子分離を提案しましたが結果賛同を得られず来院が途絶えていました
そのお子さんですが、検診の際に大人のはが生えてくる時期なのに全く生えてこないと言う相談を受けました。
それもそのはずお口の中を見てみると、虫歯でが歯が全部溶けてしまい顎と顎で咬んでいる状態でした。
それでは歯が生えてくるスペースはないので、歯が生えてくるはずはありません。
そしてこの状態になってしまうと、修正(歯が生えてくる)はかなり難しいです
つまり、歯がなく今後生活していかなければいけない状況です。
反対に同時期同じようにお母さんと話し合いをして母子分離に賛同をいただけ当院に通い続けてるお子さんがいます。
このお子さんも乳歯のときに歯が全て虫歯になってしまい、顎と顎で噛んでいるような状態だったのですがその後トレーニングを積み重ね(1度だけ母子分離をし)治療ができ、今やしっかりと大人の歯が生えてきてます
今では歯医者が楽しいと言ってきてくれます
このように年齢もありますが、基本的にはトレーニングでできるようにする
どうしてもダメな場合相談の上最終手段として母子分離をした場合ほぼ全てのお子さんができるようになっています
改めて比べてみたときに随分と大きな差だなあと思い、自分たちの仕事の責任の大きさを痛感しました
検診をお手伝いいただくフリーランスの歯科衛生士さんに以前言われたことですが、当院に通ってる患者さんさんとそうじゃないお子さんの違いがはっきりわかると言われました。
それぐらい幕別のお子さんの口の中は厳しい状況です。
現在日本全国では、乳歯の虫歯の数は平均1本を下回っているというデータがあります。
しかし、幕別(札内も含む)では1本どころか、昭和の頃、つまり僕自身が子供の時に虫歯をいっぱい抱えてきた時と同じくらいの虫歯の数です
最初に開業したときにこれをなんとかしようと思ってやってきました。
結果当院に来ていただいているお子さんたちのお口の中はよくなりました
ですが検診等にて検診等で注意勧告をさせていただいてますが一向に良くならずまた成長に伴いどんどん悪化しているというのが現状でありそのお子さんたちが生え替わりの適齢期になってきて大変なことになってきています。
しかし先程の母子分離の話ではありませんが、現在は昔は父権主義と言って医者・歯医者がこうしなさい。従うべきという時代でした
ですが今は違います
現在はそういう時代ではありません。
他の成人の方の治療においてもそうですが決めるのは患者さんであり、その責任は患者さんに既存します。
僕たちはあくまで患者さんが決める上での情報提供をするという時代です。
その数年ぶりに検診で見たお子さんの口の中を見てびっくりしましたが(多分全国的に見てもそういうケースはあまりないと思います)、これも今の時代においては致し方ないことと割り切っていくしかないことと思いました。
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